配を掛て悔し


風花の舞う中、それぞれに別れを惜しむ姿が有った。
行列が見えなくなるまで、一衛は手を振った。
京都守護の役目についた会津藩の働きは、目覚ましかった。
会津藩士は現地で招集した浪士組と共に、たちまち多数の不穏分子を排斥している。
不埒な暗殺姦盗を取り締まる為、会津藩では藩兵が夜中も京都の町を巡回し、治安の維持に努めた。

直正の母が届けてくれた文を抱いて、一衛は嬉しさに思わずくるりと回った。
胸を躍らせ、部屋に籠って直正の文を何度も繰り返し読んだ。
いつかは自分も父や直正のように京都へ行き、天子さまに頼りにされるほどご立派な殿の御役に立ちたいと思う。

「一衛。そろそろ講義の時間ですよ?また、直さまからの文を読んでいたのですか?」
「あい。直さまが、みなさまの御様子をお知らせくださったのです。父上や叔父上は御多忙で文を書く暇もないようだけれど、息災でやっているから心配はいらないと書いてくださっています。一衛も父上や直さまに負けないように励みます。」
「そうなさい。あ、一衛。今日も鍛練で遅くなるのでしょう?お弁当を作っておきましたから、持ってお行きなさい。」
「ありがとうございます、母上。行って参ります。」

日新館武道場では、午後から多種の武道を教えている。
槍術が苦手で泣いた一衛は、旅立つ前の数か月、毎日直正に教えてもらった小太刀を扱うようになって自信をつけていた。
相手の太刀筋を見切る素早い動きは、押さえつけられ涙を流した時とは、別人のようになっている。

皆、口々に言う。

「だって……わたしは皆の中に入ると一番小さいから……。同じ年の皆の中にいると、出来ない事ばかりで悔しかったんだ。竹とんぼは、わたしを心配した直さまがお友達と一緒に遊びなさいって言って、たくさん作ってくださったから……」
「なぁんだ、そうだったのか。」
「うん。皆の事が嫌いなわけじゃない。」
「結局、我らと遊んだのは、直正殿に心けたくなかったかということなんだな。」

「返品……?」

ああ、その手があったかと、ふと視線を巡らせばあっくんは「返品」という単語に敏感に反応してこちらを向いた。

「もし、そうしたらどうなるんだ?」

「ディスクを抜いて、異常がなければもう一度モニターに出すことになるな。商品化するにはもっとデータが必要だから。少しでも異常があれば、廃棄処分だ。高熱炉で跡形もなく、焼くことになる。」