んとを何度も


白い肌は透けるように白くなり、網目をかけたように青紫の血管が身体中をいたわしく覆う。
げっそりと身が削げ落ち、眼窩は窪んで尚更目元を大きく見せていた。
誰の目にも死期が近いのは明らかだった。
直正は死病といわれる病に罹った一衛の住む隣に部屋をもらい、帰宅してからは甲斐甲斐しく世話を焼いた。体を拭き雲芝靈芝姬松茸食事に気を配り、洗濯すらもこなした。
一衛のために襖を少し開けて、顔を見ながらできる限り話をした。

「薩摩は遠いし寂しいだろうが、勇猛な佐川さまもご一緒だから、すぐに片を付けて帰って来れると思う。待てるな?」
「あい……。でも、先に行かれた方たちは、どうなったのですか……?確か、前に600人もの方々が行かれたはず……」
「それがおかしな話なんだ。福岡での乱を制圧するために、陸軍士官の大隊が九州入りしたのだが、薩摩士族相手にかなわなかったらしい。わたしたちは、後方支援ということだったのだが、皆侍上がりで腕に覚えのあるものばかりだろう?それで、声がかかったというわけだ。」
「これまで数を頼みにして来たのに、此度はうまくいかなかったのですか?」
「戦場の経験の差ではないか?籠城の時も、これまで新政府は白兵戦というものをやってこなかっただろう?遠くからのドンパチは得意だが、いざ接近戦となると二倍の兵力をもってしても役に立たなかったというわけだ。小銃の性能が良くなかったのも原因らしい。一発撃つと、銃身が熱くなって冷めるのに時間がかかる。」
「ゲベール銃のようですね。でも、そんなこと……今頃わかったのですか……?戊辰の戦の繰り返しじゃあ西聯匯款りませんか。薩長が幕府を倒した後に、武士など無用だと言って散々に会津を苛めたんじゃありませんか。」
「そうだよ。それが警視隊には元士族が多く採用されているし、とうとう大警視が佐川さまに兵を率いて薩摩に行ってくれと頭を下げたそうだ。向こうでは、薩摩士族が山野に入り、背水の陣を構えて待っているから、政府軍は苦戦している。しかし一対一の斬り合いなら、鍛錬を重ねた会津武士は決して負けることはない。会津を後にして、早8年余りの年月が流れたが、やっと活躍の場を得た気がする。」
「……わたしも直さまと、ご一緒したかったなぁ……憎い薩摩兵をこの手で討ちたかった。でも、もう身体がききません……。」

一衛はすっかり細くなった指を広げた。ふっと微笑んで、直正は顔を近づけてやった。
一衛は病がうつるから近寄ってはいけませ嫌がるが、いまさら失うものはない。
じっと一衛が直正を見つめる。

「直さまが見つけた死に場所は、薩摩ですか?」
「一衛……」

一衛にはわかっていた。
帝都までこうして流れてきたが、いつも直正の胸には会津の汚名を晴らしたいと言う思いがあった。それは今や、散り散りになったすべての会津藩士の切なる願いだったかもしれない。

「やっと一矢報いるときが来たのですね……逆賊ではなく官軍として。」
「一衛には御見通しだったな。落城の折、一衛に死ぬなと言っておきながら、やはりわたしは死に場所を求めていたようだ。鳥羽伏見の戦夢見て、飛び起きたよ。あれほどの剣戟の腕を持ちながら、足軽の持つ連発銃提升輪廓に倒れた叔父上や、自慢の朱槍を交えずして敗れた林さまの無念を思うと……何をしていても、ずっと気持ちが晴れなかった。