言えばなこと


「お勝手口で泣いているんだ。あたしも慰めようがなくて、途方に暮れていたところさ」勝手口の外側で、従弟の直が膝を抱えて座り込み、丸くなっていた。
もう泣き疲れてしまったのか、赤い目をしていたが涙は止まっていたようだ。

「直、何しているの?」
「……まあちゃん……」
「そんなところに座っていたら、冷えておなかが痛くなるよ」

優しい従兄の姿を見て、直の涙腺は再度緩んだ。

「まあちゃん。ぼくね、クレープ作ったの……」
「クレープ?直はそんなのが作れるのか。すごいな」
「……お……父さん……作っちゃダメだって……お誕生日おめでとうっていうつもりだったのに……」
直の足元には、一生懸命作ったらしいクレープの残骸があった。どうやら叔父は、皿ごと投げ捨てたらしい。

「捨てられちゃったの……」
「そっか。叔父さんは考え方が古風だもんな」

脳裏に傲岸不遜な叔父の顔が浮かぶ
ふと見れば、たくさんの蟻が集まって来ていた。

「きっと、これすごくおいしいんだね。蟻さんが大喜びだ。叔父さんも一口食べてみればよかったのに。そしたら、直がどんなにこれを上手に作ったかわかったのに」
「まあちゃん……ぼくね、すごく悲しかった……」
「うん。頑張って作ったのに、捨てるなんてひどいね。直は、叔父さんがおいしかったよって言ってくれるだけで良かったんだろ?」
「……ん……」

とうとう直の涙腺は決壊し、ぽろぽろと頬を伝った。小さな直が、どれだけ頑張ったか正樹にはよくわかる。
手にはいくつかやけどの跡があった。背の低い直の腕が、テーブルの上のホットプレートの縁に当たってしまったのだろう。
母の居ない直は、父をすごく慕っていたが、事業の忙しい父が息子を顧みることはほとんどなかった。祖母と家政婦に預けていれば、何事もなく育つと思っていたのかもしれない。
だが、この多感な少年は、いつも父の手を求めていた。
正樹は縋りついて泣く少年の、体温を感じながら頭を撫でてやった。
震える直の胸の痛みは、親と相いれない自分の痛みと同じものだ。

きっと直も自分と同じような生き方をするのだろうと、予感がした。自分に絵があるように、直にも好きなものを大切にして欲しいと、正樹は思った。
後悔をしない生き方は難しいけれど、それでも自分で選択した生き方をしていれば、立ちはだかった困難にも勇気をもって立ち向かえる。それは自身が経験済みだった。
ちゃんと伝えても、直に理解できるかどうかわからないが、正樹は試みた。
フリッツが自分にそうするように、懐の心もとない存在を、ぎゅっと抱きしめた。

「直、あのね……」
「うん……」
「直は、そのままでいいんだよ。直はこれからも自由に生きるんだ」
「自由に?お父さんが駄目って言っても、お菓子作ってもいいってこと?」
「そうだよ。直の思った通りに生きていいんだ。誰が反対しても、僕はきっと直の応援をする。大きくなってどうすればいいか迷ったら、自分の心に聞いてみて。一番そうしたいって方を選ぶんだよ」
「……まあちゃんも?」
「僕もそうして生きてきたよ。例え誰かを傷つけるようになっても、自分を曲げちゃいけないときはきっとくる。直が自信をもって、真っ直ぐに生きていたらきっとみんないつかはわかってくれる。本当の直を好きになってくれる人が、絶対に現れる」
「本当のぼく?」
「そうだよ。僕にだって現れたんだから。直も好きなものを好きだと言っていいんだ。好きなものを好きって言える直を、きっと好きになってくれるよ」
「そうかなぁ……」

正樹の言うように、父がお菓子作りを簡単に許してくれるとは思えなかった。
直の心にその時、正樹の気持ちが響いたかとそれはわからない。ただ、その後、会うたび幾度となく繰り返された正樹の言葉は、いつしか直の内側に刻み込まれ生きてゆく指針となった。
好きなものを一途に好きでいる事は、簡単そうでいて、大人になるにつれ難しくなってゆくが、直は諦めなかった。
父の期待を裏切って、自分で見つけた道を、正樹と同じように歩いてゆく。やがて結果を出して認めさせるまでになるが、それはまた違う話で完結する。表門を出たところで、名前を呼ばれ振り返った。
祖母が手招きしているのに気づき、足を止める。別れの挨拶をしていなかった。

「直はもう泣いていないよ、おばあちゃん。心配しなくても、結構芯は強いみたいだ」
「正樹と同じで、直も見た目があんな風だから弱々しく見えるけど、案外骨っぽいのかね。あたしが見る限り、あんたたちは、よく似ているよ」

すみま流は仕


「いや。女々しくなんかない。里流は強いよ。きっと俺なんかの数倍強いと思う。じゃ、後でな。」

自宅に入ろうとする彩が傍を離れると、体温が下がった気がした。

ふと振り返った彩が、里流の傍に駆け寄ると唇を掠めた。羽根でなぞったような、優しい小鳥のキス。

仕事中も思い出して、自分の唇にそっと触れてしまう里流だった。

*****

「片桐君。バイト時間なんだけど今日と明日、閉店まで延長できないかな?」

「明日は大丈夫です。嬉しいんですけど、今日はもう予定入れてしまったんで無理です。すみません。」

「そうか。じゃ、明日は閉店まで頼むな。」

「はい。」

声を掛けて来たフロアマネージャーは、里流の母の知り合いで、家庭の事情も良く知っている。
無理はするなよと、帰省した時には優SmarTone 上網先的に時間を割り振ってくれた。

「厨房にも慣れているし、片桐君は人当たりが良いから使いやすいんだ。酔っ払いにも優しいしね。」

微笑む里流は仕事で帰りの遅い母親に代わって、家事もこなしてきた。だから一通りの料理もできる。
調理師免許は無くても、厨房での調理補佐が出来るので、忙しい居酒屋で重宝されていた。

「大学を卒業したら、うちのチェーン店の店長候補にならないかい。君ならいつでも推薦してあげるよ。就職口としても、うちは結構、人気あるんだよ。」

「勧誘しちゃ駄目ですよ、店長。この子はガッコの先生になるんですからね。な?」

「なれればいいですけど……。がんばります。」

「何かさ、片桐君が頑張りますって言うと、応援したくなっちゃうよねぇ。不思議だね。殺伐としてた店内も、何となくほのぼの~穏やか~になっちゃうし。」

「ははっ……褒めても何も出ませんよ?生ビール行ってきます。」

生ジョッキを片手に4つずつ持ち、里流はホールに消えてゆく。背中を見ながら店長がしみじみと口にする。

「……ほんとに、いい子だね~」

「でしょ?母子家庭なんだけど、勉強も良く出来てね、大学も奨学金が出たから行く気になったらしいんだ。」

「うちのバカ息子とは比べ物にはならんな。」

「やっぱり頼れる親がいるといない數碼通んじゃ、違うんでしょうね。マネージャーの所はまだありがたみが分かってないだけですよ。」

やっと区切りをつけて、里事を終えた。
時計を見ると、すでに11時近い。

「もういないかも……あ……!」

視界に入った黒い影が、手を振った。

「彩さん。寒いところで待たせてせん、うまく注文が切れなくて。」

「いや。無理に誘ったのはこっちの方だからな。行こうか。」

先に立った彩を思わず追った里流だったが、どこへ行くのだと言うのだろう。
僅かな甘い期待と、立ち上る不安が交錯する。

「彩さん?あの、どこへ?話をするんだったら、こっちの方にもう開いている店は有りませんよ。ファストフード店なら駅前じゃないと……」

街燈の灯りで、彩の表情はよく見えた。
心なしか緊張しているように見える。
ややあって、彩は素面で昨夜と同じ言葉を口にした。

「ホテルへ行こう、里流。」

「……何言ってるんですか。いやです。理由が有りません。」

抗う里流の腕を、彩は強く掴んだ。目が光る。

「里流にはなくても、俺にはあるんだよ。」

「……いやですっ!」

里流は思わず手を振りほどき、駆けだした。
昨夜の別人數碼通のような彩がそこにいる気がした。

里流は悲しかった。
酒の上の事と、全てを忘れてしまおうと思ったのに、話を蒸し返して彩は何を考えているのだろう。

手繰と陸る網



静かに時は流れ、子宝にも恵まれた弟は、今も変わりなく美しい妻の寝姿に、海の宮の時間の流れと人の世の流れが違う事を、ふと思い出すのだ。
自分がこの世に生ある限り、這子はずっと側に共に居て海の潮で焼けた腕を求めてくれるだろう。
なんという天恵かと、腹の中でごちた。
いつしか白髪の混じった髪を、娘のようにしか見えない妻が、優しく手櫛で梳く。

「お大切なわたくしのあなた。間も無く兄上様がお迎えにいらっしゃいましたら、今度は這子と共に、海の宮にNeutrogena 細白晶透光能面膜機参りましょうねぇあなたはもう十分、人として長くお生きになりましたよ。」

「ねずっと、わたくしの側に居てくださいね。」

海面を魚の尾が、ぴしゃと叩く。
見慣れぬ赤銅色の珍しい鮫が、若い漁師のの周囲を、楽しげに何度も跳ねた。

「おう。叔父御、お達者か。」

鮫の腹には、小さな小判鮫がしかとかき付いて、餌を食む邪魔をしている。

相も変わらず、天児さまとお仲のよろしいことで。」

龍王の眷属は、人の世と魚の世を自在に行き来できた。
這子と弟の間に生まれた一粒種は、自在に海を行き来した。
下帯一つの身軽な格好で、漁師は小刀一つを口にくわえると、しなやかに深く潜って貝を取る。
魚の仲買も驚くほど、この漁師の船はいつも大漁で海神のご加護が有ると、もっぱらの噂だった。
突然、夜襲を受けて逃げ惑うしかできなかった、家中の人たちの霊がそこに眠る。


腹心の裏切りに、なす術もなくひたすら落ちるしかなかった若様。


うん?


納得できない違和感が、胸の中に持ち上がった。


ちょっと変だよ?


篠塚の当主は生き延びて、これまで代々続いているのが何よりの証拠だと思うんだけど


若様は自分は座敷で死んだって言わなかった?


奥方と落ち延びたはずの若様が、はぐれてしまったなんて話は聞いたことがなかった。

「真子。」


あたしを見つけて、若様が駆け寄ってきた。


きゅんきゅんしっぽを振るのが見える気がする。


やっぱり豆芝みたいで、可愛い。


ただ今日、光の中で薄く透けた若様は、なぜかとても心もとなく見えた。


「ここに、皆は居たのじゃな」


大きな石を見上げる若様は、懐かしそうにそういった。


「わたしは、本来ならここに皆と共に埋葬されるはずであったのじゃ。」


「どうしてそんな話をするの?」


「真子の顔に、聞きたいと書いておる。
違うのか?」


あたしは若様のほっぺたを、むにゅと両方から引っ張った。


そういう大人みたいな気は、使って欲しくなかった。


「行こう、若様。読経Neutrogena 細白晶透光能面膜機の時間よ。」

あたしは、若様の手を引いて本堂に連れて行った。


ママが小さな声で、文句を言った。


「遅いわよ。」


ご住職の後ろに皆神妙に並んで、読経を聞いた。


頭上を、涼やかな風が通る


まずいここで眠気がくるのは、いけないと自分でも思う。


余りに罰当たりよね


ふと、隣を見ると若様は先ほどよりももっと薄い姿になって、座布団の上で寝息を立てていた。


抱き上げようとしたら、手がすっと抜けてしまった。


「うそっ!」


若様に触れなくて、焦ったあたしは読経中だというのに、思わず声を出してしまいママににらまれた。


これって、若様一大事の予感。

結局の話。


後から分かったのだけど、どうやら、修行を重ねたご住職の読経には、ありがたくも浄化に絶大な効果が有るらしいのね。


霊体の若様は、徳を積んだご住職のお経に清められ、思わず思いも遂げないまま、うっかり「成仏」してしまいそうになったらしい。


その後、あたしは読経中だったけど、若様に声をかけて無理やりおばあちゃんの家に帰ってきた。



それは代々の住職だけが知る秘密事項になり、何百年もの間、篠塚の当主すら知らない秘め事だった。



火の中で亡くなった若様は、きっと亡くなった後、どうしていいのか判らなかったのだと思う。


親より先に亡くなった若様は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかったのだと思う。


あたしは視えた映像を持て余しながら、お寺の青石のところにいた霊に会ってみようと思っていたのだけど、この状態じゃ宗ちゃんは役に立ちそうにない。



今のところ、あたしに見えるのはご先祖様の霊だけだから、もしかすると青石のところにいる人は若様につながる人なのかもしれなかった。


前向きな期待ばかりで、どうなるかわからなかったけど、とにかく若様が泣かなくて済むように、何とかしてあげたかった。
ご先祖様からしたら、おばあちゃんは直系だから、あたしよりも霊には親しみやすいかもしれないしね。

おばあちゃんはすぐ横で般若心経を唱えてくれていたけど、あたしの鼓動は隣に伝わりそうなくらい、大きく打っていたと思う。


霊媒体質の宗ちゃんと違って、あたしは霊が憑くという初めての経験に、すごく面Neutrogena 細白晶透光能面膜機食らっていた。


あたしであって、あたしじゃない感じ。

てくり袋を


「いや。もしくは、狙っているというべきなのか?何か、お婿さんになる話あったよね、日本昔話でさ。」」?実はな、おまえは稲田家から、本家の海鎚(みづち)の家に差し出される人身御供なんだ。」

「へ????ごくうって????ぼく、西遊記の猿なの。」

あ、顔色が変わったってことは、図星なのか?

「あほうっ!おまえは、どんだけ馬鹿なんだ???それは、孫悟空だろうがよ。」

?だったら、何だよ?ぼくに分かるように、きちんと説明してよ。」

親父は、お袋の方香港國際學校を向いてこんな馬鹿で、本家の方は本当に大丈夫なのかと、問うた。

?俺は、責任持てないぞ。他に代わりのものはいないんだぞ。」

「あら、何も知らないほうが初々しく見えるってこともあるでしょう?いっそ、あなた好みに染めてくださいってのも、有りだわ。」

あのー???ちょっと、よろしいですか。

夫婦の楽しげな会話に、口を挟むのもどうかと思うのですが???その台詞、どういう意味ですか?

二人は突然、黙り込んでしまった。

空気が不自然に、重いです。
ぼくには話が何も見えなくて、聞きなれない単語におたおたしてしまう。

とにかく。

学校には親戚で法事が有ると連絡し、部活の休みを貰って、明日からの春休みに本家に行くことになった。
そういえば、本家だとか分家だとか、知ってはいるけど余り深く聞いたことがなかった。
子供の頃に、木しか生えていない何もない田舎に行った記憶はあるんだけど、あれがそうだったのだろうか。

まあ、着替えは、スウェットとパーカーでいいかな。
本家に何があるのか???
それ以上考えるのをやめて、久しぶりの家族の小旅行に、ぼくの気分は甲醛すこしばかり浮かれていた。
今回は、大事な節目の祭礼だとかで、先祖供養もかねて神楽舞などの神事が、豪勢に行われるのだそうだ。

山陰の方に、本家は在るらしいのだけど、ぼくの家は事情があって大昔にこの地に流れてきたらしい。

その大人の?事情」辺りは、誰も教えてくれないんだけどね。
青ちゃんの家も親戚だから、末席に位置するのだという。

一緒にいくと聞いて、そこはちょっと心強かった。
だってさ、ど田舎なんだよ。
不便なのは我慢できるとしても、山ほどいそうだよね、ぼくの大嫌いな「長いもの」。

「あのさ。人身御供って、基本何をすればいいの?」

親父が席を外した隙に、母親に話を振ってみた。
ちゃんと辞書で引くべきだったと、後で思った。

『人間を神への生け贄(にえ)とすること。また、その人間』

そんなのぱぱっと検索すれば、すぐに分かったのに。

「クシ。行けばわかるわ。」

いつに無く、真剣な面持ちで母親は語った。

「これはね???おまえが、この世に生まれるずっと前から、決められていたことよ。」

?長い間、海鎚の家では、正当な依り代(ヨリシロ)が生まれてくるのを待っていたの。」

「よ???よりし????」

「巫女さんみたいなものよ。」

ぼくの脳内では、近くの神社の初詣でおみくじや、お守売っている巫女さんが浮かんでいた。

「そう。いつかきちんと話をするけれど、あんたには、早くに亡くなった双子の女浸大工商管理の子がいたって話、知っているでしょ?本当なら、その子が最適だったんだけど。」

「う~ん???そういえば昔話をしていたような???。」

ます緒にい



「詩津???お母さんは、もう死んだんだよ。伯父さん、辛くても認めて。ぼくも、もう誰にお母さんの名前を呼ばれても返事しないって、決めたから。」

「伯父さん。もうお母さんは過去にしかいないんだよ。」

サイドベッドに転柏傲灣示範單位がったまま、詩鶴は伯父に別れを告げていた。

「詩津。私は君を見捨てた。もっと早くに手術をすれば、君は助かったはずだ。聡(さとる)の花嫁になった君を眺めて暮らすくらいなら、いっそ君をと???カルテを改ざんして、自分の思い出の中に閉じ込めてしまおうとしたんだ。」

「伯父さん、きっとお父さんは知っていたと思う。お医者様だったんだもの。助けられなくて辛かったのはみんな一緒だよ。」

「私を赦すのか、詩津。」

抱きしめられたまま、伯父という人が話をしているのは、きっと詩鶴の母親だった。
天音は呆然と、父と義理の弟の抱擁(?)を見詰めていた。
そして、そのとき別れを告げた詩鶴に呼応するように、父親、澤田聡の生命維持装置のハートレイトが高い音で鳴り響き、切れ掛かっていたか細い命の終了を告げた。

振り向いた伯父は、恋敵でもあった澤田聡の機器に飛びつき、?聡?と叫んだ。
恐らくそれが本能という物だったのだろう。
殺したいほど憎んだはずの弟が、静かに絶命を迎えようとした時、彼は迷わず蘇生しよう柏傲灣呎價とさえした。

?まだ、間に合う!カンフルを、天音っ!?

?伯父さん、もういい、お父さんを眠らせて。お父さんは、もうお母さんの傍に行くんだよ。?

「お別れを言って。」

「詩???鶴。」

物言わぬ父親を枷にして、長い間詩鶴を思い通りにしてきた伯父と天音が、ベッドサイドに立ち脈を取った。

?ご臨終です。?

医師の顔で天音が告げ、別れを決意していたはずの詩鶴は、大きな声で父親の名を呼び泣いた。

「あぁ~ん??おとうさ???ん???お父さん???」

細く骨の浮いた腕を握り締めて余りに悲痛に詩鶴が泣くから、俺はもうどうしようもなく傍に呆けたようにして佇んでいるだけだった。
つい最近、俺も経験した身内との別れ。

詩鶴の父親は、息子の選択が正しいと言わんばかりに命を手放した。

「お母さん、お父さんが逝ったよ。これで一緒に、ずっと一られる???」

俺は、緊張の糸が切れたように静かに泣く詩鶴を、ここで一人にしなくてすんだことにほっとしていた。


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二重カウントを止めていますので、キリ番は当分ないと思いが今回、ニアピンを踏んで下さった方が名乗ってくださいました。(//▽//) きゃあああっ!此花、大喜びです。小春さま、どうぞリクエスト、おっしゃってくださいね。

キリ番踏んだよ~と、おっしゃる方もまだまだ拙いですが、頑張るつもりです。
いらっしゃいましたら、是非。
昼ドラのような、今話ももう直ぐ終わります。北壁のア柏傲灣イガー(此花にとってのエチ場面)の征服は恐らく最終話に入るはずです。どんだけ、ひっぱっとんね~ん、こら~(`?ω?′)←うっすら、頑張ります!???と、自分にハードル。

配を掛て悔し


風花の舞う中、それぞれに別れを惜しむ姿が有った。
行列が見えなくなるまで、一衛は手を振った。
京都守護の役目についた会津藩の働きは、目覚ましかった。
会津藩士は現地で招集した浪士組と共に、たちまち多数の不穏分子を排斥している。
不埒な暗殺姦盗を取り締まる為、会津藩避孕 藥では藩兵が夜中も京都の町を巡回し、治安の維持に努めた。

直正の母が届けてくれた文を抱いて、一衛は嬉しさに思わずくるりと回った。
胸を躍らせ、部屋に籠って直正の文を何度も繰り返し読んだ。
いつかは自分も父や直正のように京都へ行き、天子さまに頼りにされるほどご立派な殿の御役に立ちたいと思う。

「一衛。そろそろ講義の時間ですよ?また、直さまからの文を読んでいたのですか?」
「あい。直さまが、みなさまの御様子をお知らせくださったのです。父上や叔父上は御多忙で文を書く暇もないようだけれど、息災でやっているから心配はいらないと書いてくださっています。一衛も父上や直さまに負けないように励みます。」
「そうなさい。あ、一衛。今日も鍛練で遅くなるのでしょう?お弁当を作っておきましたから、持ってお行きなさい。」
「ありがとうございます、母上。行って参ります。」

日新館武道場では、午後か避孕 藥ら多種の武道を教えている。
槍術が苦手で泣いた一衛は、旅立つ前の数か月、毎日直正に教えてもらった小太刀を扱うようになって自信をつけていた。
相手の太刀筋を見切る素早い動きは、押さえつけられ涙を流した時とは、別人のようになっている。

皆、口々に言う。

「だって……わたしは皆の中に入ると一番小さいから……。同じ年の皆の中にいると、出来ない事ばかりで悔しかったんだ。竹とんぼは、わたしを心配した直さまがお友達と一緒に遊びなさいって言って、たくさん作ってくださったから……」
「なぁんだ、そうだったのか。」
「うん。皆の事が嫌いなわけじゃない。」
「結局、我らと遊んだのは、直正殿に心けたくなかったかということなんだな。」

「返品……?」

ああ、その手があったかと、ふと視線を巡らせばあっくんは「返品」という単語に敏感に反応してこちらを向いた。

「もし、そうしたらどうなるんだ?」

「ディスクを抜いて、異常がなければもう一度モニターに出すことになるな。商品化するにはもっとデータが必要だから。少しでも異常が口服 避孕 藥あれば、廃棄処分だ。高熱炉で跡形もなく、焼くことになる。」

んとを何度も


白い肌は透けるように白くなり、網目をかけたように青紫の血管が身体中をいたわしく覆う。
げっそりと身が削げ落ち、眼窩は窪んで尚更目元を大きく見せていた。
誰の目にも死期が近いのは明らかだった。
直正は死病といわれる病に罹った一衛の住む隣に部屋をもらい、帰宅してからは甲斐甲斐しく世話を焼いた。体を拭き雲芝靈芝姬松茸食事に気を配り、洗濯すらもこなした。
一衛のために襖を少し開けて、顔を見ながらできる限り話をした。

「薩摩は遠いし寂しいだろうが、勇猛な佐川さまもご一緒だから、すぐに片を付けて帰って来れると思う。待てるな?」
「あい……。でも、先に行かれた方たちは、どうなったのですか……?確か、前に600人もの方々が行かれたはず……」
「それがおかしな話なんだ。福岡での乱を制圧するために、陸軍士官の大隊が九州入りしたのだが、薩摩士族相手にかなわなかったらしい。わたしたちは、後方支援ということだったのだが、皆侍上がりで腕に覚えのあるものばかりだろう?それで、声がかかったというわけだ。」
「これまで数を頼みにして来たのに、此度はうまくいかなかったのですか?」
「戦場の経験の差ではないか?籠城の時も、これまで新政府は白兵戦というものをやってこなかっただろう?遠くからのドンパチは得意だが、いざ接近戦となると二倍の兵力をもってしても役に立たなかったというわけだ。小銃の性能が良くなかったのも原因らしい。一発撃つと、銃身が熱くなって冷めるのに時間がかかる。」
「ゲベール銃のようですね。でも、そんなこと……今頃わかったのですか……?戊辰の戦の繰り返しじゃあ西聯匯款りませんか。薩長が幕府を倒した後に、武士など無用だと言って散々に会津を苛めたんじゃありませんか。」
「そうだよ。それが警視隊には元士族が多く採用されているし、とうとう大警視が佐川さまに兵を率いて薩摩に行ってくれと頭を下げたそうだ。向こうでは、薩摩士族が山野に入り、背水の陣を構えて待っているから、政府軍は苦戦している。しかし一対一の斬り合いなら、鍛錬を重ねた会津武士は決して負けることはない。会津を後にして、早8年余りの年月が流れたが、やっと活躍の場を得た気がする。」
「……わたしも直さまと、ご一緒したかったなぁ……憎い薩摩兵をこの手で討ちたかった。でも、もう身体がききません……。」

一衛はすっかり細くなった指を広げた。ふっと微笑んで、直正は顔を近づけてやった。
一衛は病がうつるから近寄ってはいけませ嫌がるが、いまさら失うものはない。
じっと一衛が直正を見つめる。

「直さまが見つけた死に場所は、薩摩ですか?」
「一衛……」

一衛にはわかっていた。
帝都までこうして流れてきたが、いつも直正の胸には会津の汚名を晴らしたいと言う思いがあった。それは今や、散り散りになったすべての会津藩士の切なる願いだったかもしれない。

「やっと一矢報いるときが来たのですね……逆賊ではなく官軍として。」
「一衛には御見通しだったな。落城の折、一衛に死ぬなと言っておきながら、やはりわたしは死に場所を求めていたようだ。鳥羽伏見の戦夢見て、飛び起きたよ。あれほどの剣戟の腕を持ちながら、足軽の持つ連発銃提升輪廓に倒れた叔父上や、自慢の朱槍を交えずして敗れた林さまの無念を思うと……何をしていても、ずっと気持ちが晴れなかった。